L/Journal
Collaboration Works
Vol.06

Fluid Art

artist

madoka

2023.03.10

五感に訴える色彩のアート
そこには、花束のような生命力が宿る

フルイドアートは、何色もの絵の具をカンバスの上に流すことによって生まれる流動感や色彩構成で表現される抽象絵画だ。モダンなグラフィックアートという枠にとどまらない、五感に訴える表現力が特徴。例えば、大理石や地層のような大地の歴史をイメージさせる作品もあれば、陽光に輝く海が見せるような幾重もの光の階層を思わせる作品もある。
この春、フルイドアートを手掛ける注目のアーティストmadokaさんの作品が、GINZASIXのhueLe Museumに登場、このイベントのために制作された新作10数点が展示販売される。

アトリエに作品制作中のmadokaさんを訪ね、お話を伺った。
「制作に入る前に、私自身、GINZA SIXのショップ空間を体感し、hueLe MuseumやSTUMBLYの春の洋服たちも直接見せていただきました。そのイメージを持って制作していったら、自分でも驚いてしまうほど、明るくて開放感のある雰囲気を持つ作品になったんです。今までは結構重い色がメインだったから、今回の作品たちはとても新鮮な印象。私自身すごく好きなタッチにたどり着けたなぁと思っています」
その言葉通り、アトリエには、明るい色と柔らかな光が調和する制作途中の作品たちが並ぶ。緻密で繊細でありながら、心地いい大胆さのある色のハーモニーの中に、春の花束を思わせるような生命力が漂っている。

歴史ある截金技法と
モダンアートの出会い

madokaさんのフルイドアートには他のアーティストにはない大きな特徴がある。截金(きりがね)という仏像や仏画の装飾技法が施されているのだ。金箔を数枚貼り合わせ、それを竹刀で極細の線状に切り出し、その1本1本を“繊細な金のライン”として作品に貼り付けていく。古くは飛鳥時代までさかのぼる歴史を持つ装飾で、いうまでもなく熟練の技術が必要とされる。実は、madokaさんの父はこの截金を行う仏師。もう10年以上のあいだ父からこの技法の教えを受け、父の創作のサポートも行っている。そして、自身が手掛けるフルイドアートにもこの技法を取り入れた。比較的新しいモダンアートに、数百年の歴史を持つ日本仏教美術の装飾をミックスさせたのだ。
「絵の具を流して作っていくフルイドアートの過程は、偶然性や直感や即興に頼る抽象芸術的な面があります。一方、截金のプロセスは、自分とじっくり向き合って、意志をもって創造していく修行のような時間。非現実と現実のハイブリッドって感じです」
伝統的な技術を受け継ぐ職人であり、アーティストとしても大先輩である父に一歩でも近づきたいという気持ちが、柔軟でありながら鋭い感性とミックスされて、他にはない魅力と独自の世界観をたたえる唯一無二のフルイドアートが生まれる。

偶然性をアートに昇華
時代にマッチするクリエイティブ

創作活動はずっと続けていたmadokaさんだが、フルイドアート歴はまだわずか1年半だという。
「気になっていたフルイドアートを本格的にやろうと思ったのは、実はコロナの流行がきっかけでした。感染の広がりで、生活や社会や人々の気分が変化していくのを目の当たりにして、その抗い難い変化を表現したいと思って、取り組み始めたんです。フルイドアートは下書きもできないし、絵の具の流れにしても完全にはコントロールできない。偶然に起こることの中に何かのサインやイメージをキャッチして、そこに自分のクリエイティビティを重ねていかないといけない。偶然に起こったことを起点に、必然性ある作品に仕上げていく作業です。そんな創作過程が、今という時代を表現するのにピッタリだと思ったんです」

madokaさんの作品は3月10日(金)からGINZASIXに並ぶ。初日にはmadokaさん本人もショップに立つ予定だ。
「今回の作品たちはGINZA SIXやhueLe Museumのコレクションにマッチする春の色満開の作品になりました。この時期に、この空間でしか味わえない展示になると思います。ぜひ体感しに来てください」

madoka

1986年大阪府生まれ
仏師である父から影響を受け、20歳頃から絵を描きはじめる。2011年に父から伝統技法の截金を教わり自身の作品にも截金を取り入れはじめる。2014年からは父の作品(仏像)の截金部分もサポート。2019年初めてアートフェアに出展、翌年大阪のギャラリーで初の個展開催。その後も精力的にアートフェアやグループ展などに参加。

Photographs / Videographer and editing : yoichi (TAKASE OFFICE Inc.)