L/Journal
Story of HUE
Vol.05大日方 久美子/パーソナルスタイリスト

ライフスタイルを理解してこそ
お客様に寄り添う服を提案できる

hueLe Museumは「ファッション」「アート」「フラワー」という3つの要素から生まれたオンラインストア。ときめく3つのエッセンスがケミストリーを起こし、今までにない新しい価値観を生み出していく。このStory of HUEという連載では、さまざまなクリエーションの背景にあるストーリーにアプローチ。話題のクリエイターの世界観を構成する3つの要素とは?

2021.11.05

01
Work
02
Family
03
Art

ファッションは理論も大事で
常にアップデートするべきもの

新卒で入社した旅行会社で、接客が好きなことに気づいた大日方久美子さんは、好きなファッションを通して接客を極めたいとアパレルに転職した。現在多くの迷える女性たちを救うパーソナルスタイリストとして活躍する大日方さんだが、意外にもそのスタートは「自分はあかぬけない」という自覚からだったという。「それなりに頑張っているんだけど、もう一歩あかぬけない。どうすればもっとこなれて見えるのか、どうすればカジュアルに着崩すことができるのか、人に聞いても正解はなかった。だからすごく研究しました」

具体的には、雑誌に載っているスタイリングや、街で見かけた素敵な着こなしをチェックしてデータを集め、それをできるだけまねするようにした。「今思えば、自分が少々ダサいからどうにかしたいと思って研究を続けたことが、パーソナルスタイリストの仕事にすごく役に立っています。あるとき、昔おしゃれだった女性たちに数十年ぶりに会ったら、当時の感覚のまま止まっていた。それを見たときに、ファッションは理論も大事で、常に鍛えていくべきものだということに気づいたんです」
自分が足りないからこそ、少しでも良くなりたいと努力する。手に入れたもので満足せず日々アップデートする。それが習慣となり糧となり、説得力のある言葉として多くの人の心に響くのだろう。「どうすればおしゃれに見えるのかわからない、と思っている人はたくさんいらっしゃると思うんですが、そこに気づけたのはチャンスだと思います。“自分はあかぬけないから”とあきらめていたら可能性はないけれど、“どうにかしたい”と思ったら、きっとどうにかなる。とにかくやってみた人には、ご褒美が待っているはずです。“どうにかしたいから久美子さんのイベントに来ました”と言われたら、私は絶対に力になります」

1. Work / 仕事

接客という仕事を通して
信頼関係を築く

2016年に出版した著書『“エレガント”から作る大人シンプルスタイル』というタイトルの通り、大日方さんはまず自分が考える“エレガントでシンプル”なスタイリングを作り、そこからお客様の個性に寄せていくという提案が基本だ。「スタイリングを考えながら、その方のライフスタイルをうかがいます。お子さまがいらっしゃるのか、シングルなのか、どんな所にお住まいなのか、通勤は電車なのか、車なのか、会社はどんな場所にあるのか、どんなマインドで働いているのか…。それによってスタイルは変わってきます。さらにその方のクローゼットも把握して、持っているものと組み合わせられるもので、今シーズン何を買ったらいいかを考える。主役は服ではなく人ですから、ライフスタイルを理解してこそその方に寄り添う服が提案できるんです」

ショップスタッフがお客様に、「このコート、かわいいからおすすめですよ」と言うのはあたりまえのように聞こえるが、大日方さんいわく「だから服が売れないんです」。お客様が来店した曜日や時間帯、着ている服、そこから想像できる職業や経済力…それを一瞬で判断したうえで、お客様が本当に求めているものを見抜き、何を提案するか。それがショップスタッフに対しての信頼を生むのだと考える。「お客様が求めていらっしゃるものがショップにない場合、正直にないと言えるかどうかも大切です。さらに、うちにはないけれど、どこどこのショップにはありましたよと教えてあげられたら、感動してくださると思うんです。今回は買わなくても、また行ってみようと思ってくださるかもしれない。販売とは、そうやって信頼関係を築いていく仕事だと思っています」。大日方さんにとって、お客様が喜んでくれることが仕事の醍醐味なのだ。「お客様の幸せそうで自信に満ちた表情を見た瞬間、アドレナリンが出るんです。私、アドレナリンジャンキーかもしれない(笑)」

2. Family / 家族

“大切な存在”である
旦那さまと愛犬たち

朝起きて、旦那さまと犬たちの元気な姿を見るのが最も幸せを感じる瞬間だという大日方さん。現在旦那さまと、4匹の飼い犬+一時預かり2匹の合計6匹の保護犬と共にくらしている。「夫はアートから政治・経済まで何でもよく知っていて話題が豊富。とてもリスペクトしています。最初は頼れる男性という感じでしたが、だんだん甘えるようになってきて、今では5歳の男の子のようです。このあいだ『僕が一番の保護犬なんだよ』って言われて、妙に納得してしまいました(笑)。出会ってから11年、もちろんケンカをすることもありますが、今では“愛する人”よりもっと上の次元の、“大切な人”になりました」

旦那さまと一緒に犬の繁殖場を見に行ったのがきっかけで、2014年頃から保護犬活動を始めた。里親を探したり、元気になるまで一時預かったり、家にいる犬と相性がよければそのまま引き取ったり。そうしているうちに現在4匹の犬を飼っている。一口に保護犬といってもさまざまで、たとえば野犬は人間に雑に扱われ恐怖心や警戒心が強いけれど、悪徳ブリーダーからレスキューされた犬たちは、人間と一切関わらずケージに入れられたままなので感情がない。「いろいろな犬がいるけれど、そのコたちが少しずつ心を開いていってくれる過程に幸せを感じます。すべての犬を救えないことに自分が無力であることを思い知るし、それでも感情に流されず気持ちをコントロールして犬たちと向き合えるようになりました。結局、犬たちのおかげで私が成長させられているんですよね」

3. Art / アート

アートを通して
知らなかった感覚に出合う

ある日、大日方さんの旦那さまがスタジオジブリ制作『天空の城ラピュタ』のセル画を買ってきたという。目玉焼きをのせたパンをパズーとシータが分け合う名シーンで『なんでも半分こ』というタイトルがついたそのセル画を、「僕たち夫婦のテーマだよ」と言って。「ある人が見ればアニメのセル画にしか見えないかもしれないけれど、夫はそれを“宮崎駿の細胞”だと言うんです。宮崎監督はどんなシーンも絶対手を抜かないから、すべてのシーンに魂が宿っている。だから僕はあれを見るたびに、どんなことも細部までこだわろうと思う、と。アートって、見る人によってまったく価値が違うということに気づかされました。自分にとって何が価値あるものなのかを明確にしてくれるものがアートなのだと思います」

大日方さんは、アーティストのサポートも行なっている。それは社会貢献の一環でもあるけれど、なによりそのアーティストの作品が好きで、いつか彼がアーティストとして世界に羽ばたいてほしいという夢ものせている。 「たまに、自分が漠然と考えたり感じていたことを、誰かのアート作品を見て確認できたりすることがある。まったく知らないアーティストと思いが通じたときの喜び。または自分では想像もできなかった感覚や思考を叩きつけられたときの驚き。そういう瞬間に出会えるからアートは楽しいですね」

自分に対して「よくやったね」と
ほめてあげたい

「きちんとお金が循環する犬のシェルターを作りたい」という大日方さん。過度な繁殖をやめさせるにはペットショップで売らないことが一番だが、そのためには今ショップにいる犬たちを受け入れるシェルターが必要になる。「ペットショップで何十万という値段で売っているのに、保護犬はただっておかしいでしょう? 病院で体調整えて、トレーニングして、トリミングして、きちんとケアしたコを有料で譲渡する。そしてそのお金でまた次のコを保護する。そういうシェルターが必要だと思うんです。そのためにはスポンサーを探したいし、ペット先進国のドイツに勉強にも行きたい。夢みたいだけど言わなければ実現しないから、あえて言うようにしています」

もちろん大好きなファッションを盛り上げていくために、販売という仕事の大切さをもっと伝えていきたいという。「お客様を理解したうえで服を提案できる販売員を育てるために、接客セミナーを始める予定です」。 そのアグレッシブな生き方を支えるのは“自尊心”だ。「自尊心は高いほうがいいと思いますね。自分を尊い存在だと思うことは大事。自尊心があれば他人の称賛は必要ないので楽になります。自分に対して『よくやったね』とほめてあげられたら、後ろを振り返ったときに道ができていることに気づくはず。あきらめなかったから今ここにいる。だからこの先もあきらめずに歩いていこうと思えるはずです」

Personal Stylist

大日方 久美子

Kumiko Obinata

1976年生まれ。アパレル販売員を経て、2013年よりパーソナルスタイリスト。着こなしや美容情報などを発信するインスタグラムは9.5万人のフォロワーを持つ。アパレルブランドのスタイリングやイベント企画も行なっている。著書に『“エレガント”から作る大人シンプルスタイル』(KADOKAWA)

キンプトン新宿東京

2020年にオープンしたキンプトン新宿東京は、アートインスタレーションやポップアップストアなど、モダンな感覚にあふれたラグジュアリーライフスタイルホテル。
ペットとの宿泊も可能で、客室にペットアメニティも用意されている。
館内のカフェやダイニングもペットOK。


キンプトン新宿東京
新宿区西新宿3丁目4-7

ハッピーをテーマにしたキンプトン新宿東京の新・開運アフタヌーンティー

11月1日より人気イラストレーターSHOGO SEKINE氏監修による、ハッピーモチーフ満載の「気がアガる」“いちごフォーチュンアフタヌーンティー” 販売開始!

Photo_Shoichi Ishida, Kumiko Obinata

Edit & Text_Ayumi Machida