L/Journal
Story of HUE
Vol.02山口香織/「VEIN」フラワーアーティスト

植物の葉脈(VEIN)が好き。
人間関係も葉脈のように広がっていったらいい

hueLe Museumは「ファッション」「アート」「フラワー」という3つの要素から生まれたオンラインストア。ときめく3つのエッセンスがケミストリーを起こし、今までにない新しい価値観を生み出していく。このStory of HUEという連載では、さまざまなクリエーションの背景にあるストーリーにアプローチ。話題のクリエイターの世界観を構成する3つの要素とは?

2021.03.22

01
The Little Shop of Flowers
02
Handmade
03
Antique

人間関係から生まれた
ファッションとフラワーの
コンビネーション

フラワーショップ「VEIN」(ヴェイン)を始める前は「ザ・リトル・ショップ・オブ・フラワーズ」で働いていた山口さん。オーナーの壱岐ゆかりさんが手がけるPRの仕事を手伝っていて、その時に知り合ったのが、「VEIN」のパートナーの柴田麻莉さん。独立のタイミングが同じ頃だったこともあり、一緒にポップアップをやろうという話になったそう。

「ギャラリーを借りて5日間、洋服と花をディスプレイしたところ世界観がマッチして、一緒にお店を探すことに。彼女はもしお店を開くなら花屋を入れたいとずっと考えていたらしく、とんとん拍子で話が進みました」。静かだけど独立した店舗が並ぶ街並みが気に入って千駄ヶ谷の物件に決めた。「パートナーのお店がNYブランド中心の服を扱っていることもあって、NYのMOTT ストリートにちなんでTHE MOTT HOUSE TOKYOという名前に決めたそうです。細長い作りで、その手前にVEINを作りました」

1. The Little Shop of Flowers

自分の原点でもある
「ザ・リトル・ショップ・オブ・フラワーズ」

20代前半は会社員だった山口さん。自分が本当にやりたいことは何だろうと考えたときに、花の仕事が思い浮かんだという。そこでいくつかのお花屋さんを見てまわっているとき、偶然見つけたのが「ザ・リトル・ショップ・オブ・フラワーズ」だった。都心にありながら緑を感じるお店は、まるでジブリの世界。「看板の文字が好きすぎて、何度も自分でまねして書いたりしていました(笑)」。オーナーの壱岐ゆかりさんに働きたいと何度もメールし、ようやく面接へ。翌日から働くことになった。
「ここからが衝撃でした。店長さんと2、3回一緒に入って基本的なことを教えてもらっただけで、あとは自分で考えてやってみてと一人でお店に立つことに。未経験なのでアレンジの方法もわからず、ただ震えていました」。そんな武者修行のおかげで、ひとつひとつ実践で覚えることができた。「壱岐ゆかりさんは本当に異次元のセンスを持った人。そのセンスでできあがったお店の中で、どう花瓶を置いたらいいか、どう花を並べたらいいか考えました。花だけではなく、面白い本も紹介していただいたり、とにかく壱岐さんから学んだことは多すぎるし、すてきすぎて衝撃の連続でした。それがすべて今の私に生きています」

2. Handmade / 手作り

刺繍に紙粘土。
心をこめたハンドメイドのものづくり

「小さいときから絵を描いたり、何か小さいものを作ることが大好き。学生時代も好きな科目は美術図工で、その対象が今お花になりました」。といっても22歳くらいまでは花に興味はなく、「母の日はカーネーション」くらいの認識だったという。「ザ・リトル・ショップ・オブ・フラワーズでは、生花とドライフラワーを組み合わせるアレンジを作っていて、それがとてもかわいくて。こんな花屋見たことない!って思いました」。
最近のめりこんでいるのは粘土。空き瓶の外側を紙粘土で固めて、絵の具で色付けするというもので、もう少し時間をかけてクオリティを上げたら商品にしたいと考えている。「なかなか欲しい花瓶に出会えないので、将来は陶芸にも挑戦してみたいですね」。ものづくりのヒントは、本や映画、インスタグラムなどから。「インスタグラムで見つけたLane Marihnoさんというブラジルのアーティストの作品が好き。布をパッチワークしたり、さまざまな自然素材を使って作品を作っているのですが、彼女の色彩感覚は自分では思いつかない組み合わせで、とても勉強になります。まねして作ってみるんですが、同じにはならない(笑)」

3. Antique / アンティーク

自分にしか見つけられない
アンティークの一点ものに惹かれる

花の仕事を志す前に雑貨屋さんに憧れた時期があって、当時学芸大学にあった雑貨店がお気に入りだった。「美容師さんがオーナーのお店で、パリの蚤の市で買い集めたものが、小さな店内にセンスよく並べられていました。夢中になって通い詰めましたね」。その美容師さんが教えてくれたのが「世田谷ものづくり学校」。ただ何かを作りたいという一心で、3カ月通ったという。「既製品ではなく、自分にしか見つけられない一点ものに魅力を感じるので、骨董品や骨董市が好き。VEINもそういう雰囲気を大事にしているんです」
ザ・リトル・ショップ・オブ・フラワーズで働いていた頃、オーナーの壱岐さんが作っていた“花の瓶詰め”が印象に残っていたという山口さん。「ホルマリン漬けからインスパイアされて、大きい瓶に水と造花を入れたものがとてもすてきで。それで私もやってみようと思ったのがアルコール漬けです。私は小さな瓶にウォッカを入れて、そこに生花を入れてみました。最初はきれいな色なのですが、しだいに色が抜けてアンティークな雰囲気になるのが気に入っています」

花を買いに来るお客様に
寄り添う気持ちでアレンジする

「お客様はそれぞれ要望が違うので、できるだけ希望を聞き出そうと努めますね。お話のなかからいろいろ汲み取るようにしています。花の頼み方がよくわからないという方もいらっしゃるので、寄り添う気持ちでやっています。そこを一番大事にしていますね。ラッピングも1種類に決めず何パターンか用意して、また頼みたいと思っていただけるようがんばっています」。
お店を始めるとき名前をどうするか迷い、友人のアートディレクターに相談した。「好きなものは何?」と聞かれて「植物の葉脈(VEIN)が好き」と答えたら「それでいいじゃない」って(笑)。響きもいいし、しっくりきて決めました。花でも服でも結局誰かから買い、これよかったよと口コミで伝わっていく。その感じも葉脈に似ている気がして。末広がりに広がっていったらいいなという思いもこめました」

「VEIN」Flower Artist

山口 香織

Kaori Yamaguchi

2016年、千駄ヶ谷にNYブランドを中心としたセレクトショップ「THE MOTT HOUSE TOKYO」に併設されたフラワーショップ「VEIN」をオープン。 フラワーアレンジのセンスとともに、本を置いたり、雑貨を並べたりというインテリアセンスも注目されている。

VEIN東京都渋谷区千駄ヶ谷3-27-8
営業時間12:00〜19:00 不定休
tel: 03-6325-2593

Photo_Shoichi Ishida

Edit & Text_Ayumi Machida